※「のどの痛み」については,「のどの痛み:病院に行くべきサインとは?」をご参照ください.
秋に起こる鼻水・鼻詰まりの原因とは?
今年は秋の訪れが遅かったですが、例年9月〜10月になって気温が下がる頃になると、鼻がムズムズ、鼻水や鼻詰まりで困る人が増えてきます。軽い喉の痛みもあって、「風邪かな?(内科?) 花粉症かな?(耳鼻科?)」と思って病院に来る方もおられます。
秋に起こりやすい鼻水・鼻詰まりなどの症状の原因として、次のようなものがあります。
- 風邪
- 秋の花粉症(アレルギー性鼻炎)
- 寒暖差アレルギー(非アレルギー性鼻炎 あるいは 血管運動性鼻炎)
今回は、「秋の花粉症」と「寒暖差アレルギー(非アレルギー性鼻炎 あるいは 血管運動性鼻炎)」について解説します。
秋の花粉症(アレルギー性鼻炎)
「花粉症」は日本でのみ使われている用語で、医学的には「アレルギー性鼻炎」と言います。免疫に認識されてアレルギー性疾患を引き起こす物質を「アレルゲン」といいますが、花粉症は、植物の花粉をアレルゲンとするアレルギー性鼻炎となります。
アレルギー性鼻炎の3大症状は「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」で、その他「目の周りのかゆみ」「頬の赤み」なども伴う場合があります。鼻水は風邪と比べるとサラサラしていて、水様と表現されることもあります。また、風邪が1週間程度で症状はほぼ消失するのに対し、花粉症は、アレルゲンとなる花粉に接触し続ける間は症状が持続します。
「秋の花粉症」の原因アレルゲンは、基本的には草本植物の花粉で、イネ科(イネ、ススキ)やキク科(ブタクサ、ヨモギなど)の植物が原因となります。また、意外かもしれませんが、「ダニ」も重要なアレルゲンです。もちろんダニが繁殖するのは夏ですが、秋は繁殖した大量のダニの死骸が出るため、ダニアレルギーを起こす方が増えます。
秋の花粉症への対策
花粉症の治療
秋の花粉症に対する治療については、多くの有用なサイトがありますので、本稿では概略に留めさせて頂きます。詳しく書かれているウェブでの情報源としては、以下のようなものがあります。
基本的には、内服薬・点鼻薬(噴霧薬)・点眼薬などの薬を使って、かゆみや鼻水、鼻詰まりなどの諸症状を改善させる「対症療法」を行います。
鼻水主体(鼻詰まりなし)であれば、1種類の内服薬、それに加えて鼻噴霧用ステロイドを使います。鼻詰まりがある場合は、飲み薬は2種類になることが多いと思います。
その他、レーザー手術(特に鼻詰まりに対して)を行うこともあります。
花粉症のセルフケア
秋の花粉症の原因となる植物は、基本的には草で背が低いため、アレルゲンが飛散する範囲が限られています(数10メートル)。そのため、公園や川べり、草むらなどに近づかないようにすることでアレルギーを避けることができます。
また、ダニアレルギーの場合、カーペットやふとん、枕カバーにダニの死骸が溜まりやすいため、しっかり掃除・洗濯を行うことが重要です。
寒暖差アレルギー(非アレルギー性鼻炎)
最近テレビの医療情報コーナーでもちょこちょこ登場するようになった病名です。
「寒暖差アレルギー(非アレルギー性鼻炎)」は矛盾しているような病名です。正確なのは「非アレルギー性鼻炎(nonallergic rhynitis)」の方です。非アレルギー性鼻炎を引き起こす原因(トリガー)の一つが気温差であるため、分かりやすくするためにそのように呼ばれる様になったのかと思います。「非アレルギー性鼻炎(nonallergic rhynitis)」とは、アレルギー性鼻炎のように免疫は関係しないが、アレルギー性鼻炎と同じような症状を起こす病気です。以下では、寒暖差アレルギーではなく、非アレルギー性鼻炎という用語を使用します。温度差によって起こる非アレルギー性鼻炎(いわゆる「寒暖差アレルギー」)については、以下のコーナーをご覧ください。
非アレルギー性鼻炎の症状・合併症
非アレルギー性鼻炎の症状は、上述したようにアレルギー性鼻炎とよく似ています。
- サラサラの鼻水
- 後鼻漏(鼻の奥から鼻水が肺に落ちて咳が出る)
- くしゃみ
- 鼻詰まり
非アレルギー性鼻炎に伴って下のような別の病気を合併することがあります。
- 副鼻腔炎(蓄膿)
- 慢性中耳炎
- 嗅覚・味覚の異常
- 喘息
- 睡眠時無呼吸症候群
非アレルギー性鼻炎になると、上のような症状・合併症のほか、仕事の能率低下、病院受診の増加、薬物療法の副作用(鼻の乾燥、鼻出血、眠気)が増えることが言われており、生活の質に与える影響が大きい病気です。
非アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎と症状がよく似ており、その区別のためには血液検査が必要です(アレルギー検査で、その季節に多いアレルゲンに感作されていないかどうかを調べる)。
ただ、アレルギー性鼻炎と異なり、原因を同定することは容易ではありません(検査では分かりません)が、非アレルギー性鼻炎を引き起こす原因(トリガー)となりうるのは以下のようなものがあります。
非アレルギー性鼻炎を引き起こす環境物質 |
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非アレルギー性鼻炎を引き起こしうる薬剤 |
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非アレルギー性鼻炎を引き起こしうる飲食物 |
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非アレルギー性鼻炎を引き起こしうるその他の誘引 |
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いわゆる「寒暖差アレルギー」とは?
上の表(「非アレルギー性鼻炎を引き起こしうるその他の誘引」)にリストアップされているように、天気の変化が非アレルギー性鼻炎を引き起こす場合があります。最近のように、30度を超える真夏日が続いていながら、急に夜は冷え込むようになると、急に鼻水が出たり、くしゃみをしたり、咳が出るような症状が現れた場合、この「寒暖差アレルギー」かもしれません。
その他、スキーをしたり、冷房が効いた部屋から出た時に鼻水が出たりするのも、「寒暖差アレルギー」かもしれません。
ホルモン変化も非アレルギー性鼻炎を引き起こす
思春期や生理、妊娠がきっかけで非アレルギー性鼻炎になることもあります。妊娠がきっかけの場合、出産するまで症状が続くと言われます。
非アレルギー性鼻炎の予防・治療
非アレルギー性鼻炎の予防は、アレルギー性鼻炎と同じように、「トリガーを避ける」ということです。
患者さんによってトリガーが異なるので、一概に何を避けるべきかとは言えませんが、例えば、
- タバコの煙がトリガー:喫煙している人の周りを避ける。家族にタバコを吸わないように頼む。
- 芳香剤がトリガー:芳香剤(柔軟剤を含む)を避ける
などという方法が考えられます。
非アレルギー性鼻炎の治療自体は、アレルギー性鼻炎と同じような治療薬を使います。
まとめ
同じような症状(鼻水、鼻詰まり、くしゃみなど)を起こす疾患 = 秋の花粉症(アレルギー性鼻炎)、非アレルギー性鼻炎 = について解説しました。非アレルギー性鼻炎の基本的な予防法や治療法はそれほど難しいものではありませんが、この病気自体を知っておけば、適当な予防法で症状を軽減できる可能性がありますので、覚えておけば有益ではないかと思います。