日常的な病気

家庭血圧は本当に正確か?

家庭血圧は正確なのか?

高血圧の患者様は,最初にご自宅で毎日血圧を測定するように医師から指導されます.

そこで,家電量販店に行くと,血圧計コーナーにはたくさんの種類の血圧計が販売されており,例えば手首で測るタイプのものや,腕で測るタイプものなどがあり,本当にどれでもいいのかと悩まれる方がほとんどだと思います.

また,以前に家族が使っていた血圧があるが,それをそのまま使っていいのかと考えられる方もあります.

そこで,家庭血圧計の選び方について概説したいと思います.

家庭用血圧は正確です

基本的に,家庭血圧計も医用の(病院で使うための)電子血圧計と同様に,承認過程で国際的な臨床評価プログラムに沿った精度検定が行われています.ここで基準となる血圧計(水銀血圧計)との差が生じないことが求められます.

ただ,集団の平均値として,一般に5mmHgまでの誤差が許容されており,ここの血圧計と被験者の特性(高齢者,妊婦,小児など)の組み合わせで大きな誤差が出るケースもあります.そのため,第三者の研究者が販売後の血圧計を改めて臨床評価して学術報告しています.日本高血圧学会が,各血圧計に関する客観的な臨床評価情報・連絡先をウェブサイトで公開しています.

医用と異なり,家庭用では,耐久性のみならず精度保証がされているかどうかが重要になりますが,少なくとも出荷時の精度は検証済みであり,安心して良いと言えます.

手首測定方式はお勧めできない

よく言われることではありますが,手首で測定する方式の血圧計は,日本高血圧学会でも推奨していません.水柱圧の差の補正が難しいのと,反射の問題があり,誤差が大きいと考えられているからです.

血圧計は一生ものではありません

血圧計は,長期間,精度を維持できる製品ではありません.カフやゴム管は明らかに劣化していきますので,使用頻度にもよりますが,数年で測定精度が低下します.上記ウェブサイトにもまとめられていますが,概ね最大3万回・5年間が寿命となりますので,昔,家族が使っていたという血圧計は使わない方が良いでしょう.

医用血圧計も例外ではなく,定期的に精度管理やメンテナンスを行うことが義務になっていない医療機器なので,明らかに古い血圧計を使用されているところでは,きちんと血圧が計れていない可能性があります.以前勤務していた病院の外来にはかなり年季の入った血圧計が置かれていました.移転前の病院からきっちり運ばれてきていたのですが,試しに使ってみると空気が漏れており,カフが膨らみませんでした.基本的に誰も使わなかったので壊れていることに気づかれていなかったのですが,ここまでいかなくても,劣化した血圧計が使用されているケースがあるかもしれません.

参考文献

  • 浅山敬,日本医事新報(4974):58-59, 2019.

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