よく患者さんから尋ねられる質問として,「採血前は絶食ですか?」というものがあります.
食事によって影響を受ける検査結果として,代表的なものは「血糖値」と「中性脂肪(食後6時間でピーク)」です.同じく糖尿病の指標となるHbA1Cは食事の影響を受けません.また,コレステロール値も食後採血で中性脂肪が高い影響で,本当はそれほど高くないのに高く見えることがあります.従って,血糖値や中性脂肪,コレステロール値を図る場合は絶食で採血を受けるように説明されます.検査の観点では,食事に影響を受けたような値はあくまで参考値という考えです.ちなみに,私の専門の白血球や赤血球,血小板については,食事の影響はありません.
ただ,心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の予防には,空腹時血糖よりも食後血糖が問題であることが知られています.中性脂肪についても同様のことが言われており,欧州の動脈硬化ガイドラインでは,随時中性脂肪 175mg/dL以上ある場合に動脈硬化性疾患のリスクが上がると言われています.(ただ,中性脂肪をどれくらいに下げればいいのかについて,コンセンサスはありません(薬が下げれば,動脈硬化性疾患が減らせるかどうかはわかっていない)).
検査の視点では,食事の影響がある検査は食事をする前に検査するのが正しい,ということになりますが,医学的には食後に調べた値の方が病気のリスクを予測する上では有用な場合もあることが分かっています.ですので,当院では,採血は食前・食後にこだわらずに検査を行っています.