感染症

東京オリンピック:受けておくべき予防接種とは?

いよいよ2020年7月24日〜8月9日に東京オリンピック、8月25日〜9月6日に東京パラリンピックが開催されます。

オリンピック・パラリンピックは世界中から選手・観戦者が訪れる大会です。推定では、約4,000万人の訪日外国人旅行者数、1日あたり92万人の来場者が予想されています。
このような状況では、生活環境の過密化(交通機関の混雑、街の混雑など)や、旅行者による病原体の持ち込みなどにより、感染症が蔓延するリスクが高まると考えられます。

流行に注意するべき感染症

流行のしやすさや重篤さの観点から次の3つの感染症に特に注意すべきとされています。

  1. 麻疹(はしか)
  2. 風疹
  3. 侵襲性髄膜炎菌感染症

麻疹

空気感染を起こす上に伝染性が非常に強い(1人の発症者から12~14人に感染させる。インフルエンザは1〜2人)ことから、免疫がない人の近くに麻疹の患者さんがいれば、感染してしまう可能性が高い病気です。発症(発熱)する1日前から伝染力があるため、患者さんも気づかないうちに人に移してしまう可能性がある点も恐ろしいところです。

ワクチン接種で予防することができる病気(VPD, vaccine-preventable disease)ですので、これまで麻疹に掛かったことがなく、予防接種も受けたことがない方は、観戦前に接種しておくことをお勧めします。

風疹

飛沫感染(くしゃみなど、唾液を介して伝染する)の病気ですが、1人の発症者から5〜7人に感染させることができる病気です。
麻疹と同じように発熱と発疹を主症状とする病気ですが、特徴的なのが、未感染の妊婦が感染すると「先天性風疹症候群」という病気が胎児に起こってしまい、先天性心疾患(動脈管開存症が多い)、難聴、白内障、色素性網膜症などの重篤が後遺症を起こしてしまうという点です。

これもワクチン接種で予防することができる病気(VPD, vaccine-preventable disease)ですので、風疹に掛かったことがなく、予防接種も受けたことがない方は、観戦前に接種しておくことをお勧めします。

侵襲性髄膜炎菌感染症

あまり聞き馴染みのない感染症かと思います。
名前からすると「子供によく起こる髄膜炎を起こす菌なのかな?」と思われるかと思いますが、実際のところ、50%の致死率を持つ大変恐ろしい感染症です。

症状は当初、風邪に似ています。病院に行っても「風邪でしょう」と言われる可能性が高いと思います。ただその後急激に症状が進行し、菌が血液中に侵入して菌血症・敗血症という状態になり、髄膜炎を発症します。体の血液が急に固まったり逆に出血しやすくなり、全身の皮膚に出血斑ができるWaterhouse-Friderichsen症候群を来したりします。激烈に進行するため、治療が遅れれば高い確率で亡くなるとされます。仮に助かったとしても、四肢を切断しなければならないケースもあります。

飛沫感染(くしゃみなど、唾液を介して伝染する)をする病気で、特に小さい子供や10代後半の若者が発症しやすいとされています。また、脾臓が無い人、先天的免疫異常症(補体欠損症)、喫煙者、HIV患者、特殊な疾患(非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)や発作性夜間血色素尿症(PNH)など)の治療薬であるエクリズマブ、ラブリズマブなどを使用している方もリスクが高いと考えられます。

予防方法としてワクチンがありますが、国内で発売されているワクチン(メナクトラ)は、A,C,Y及びW-135の血清型をカバーしていますが、米国で多いB型(日本でもかつてはB型が最多)はカバーできていません。B型は輸入ワクチン(Bexsero(R), Trumenba(R))を使用する必要があります。
ただし、この感染症自体が稀であり、日本感染症学会でも、東京オリパラに来場する一般人には必ずしも予防接種は推奨していません。ただ、上記のリスクがある方は、接種を検討する価値があると思われます。

事前に受けておきたいワクチン(日本感染症学会)

疾患名 一般市民 医療関係者 大会関係者 メディア関係者
麻疹 +++ +++ +++ +++
風疹 +++ +++ +++ +++
髄膜炎菌 ++ ++ +
インフルエンザ + + + +

+++ 全員に強く推奨
++ 感染のリスクが高いと考えられる人に推奨
+ 接種が好ましい
– 平時と同様の対応
※インフルエンザは、2019-2020に接種すること。

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