病気のおはなし

大人も掛かる手足口病 (Hand-foot-mouth disease)の大流行

手足口病の大流行

今年は手足口病が大流行しているというニュースが流れております.兵庫県でも,先週に比べ新たに300人を超える新規発症があり,「警報レベル」を超えたと報道されています.

手足口病は,主に5歳以下の子どもに発症する,夏に流行することが多い病気です.軽度の発熱とのど(口)や手足のかゆみを伴った発疹を主症状とします.小さいお子さんを持たれているお母さん方にはとても馴染みがある病気だと思います.

ただし,私は内科医ですので,正直なところ手足口病の患者さんを診療する機会はあまりありませんでした(医学部でも小児科で習う病気でした).また,若いご両親は手足口病のことをよくご存知だと思いますが,60代以上のおじいさん,おばあさん世代にとっては,「手足口病なんて初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか.子どもによくある流行病なのに,どうしてこんな世代間ギャップがあるのかと思われるかもしれません.実は,手足口病が初めて報告されたのは”1956年”と最近のことなのです.1960年ごろから世界的に出現し始めたとされるため,年配の世代には馴染みのない疾患なのだと思います.はしかや風疹,水ぼうそうなどが,ワクチンの普及で激減したので,手足口病が非常に目立つようになったのかもしれません.

手足口病の症状

  • 微熱(38℃未満のことが多い)
  • 倦怠感
  • 食欲低下
  • 喉の痛み(喉の水疱や潰瘍)

手足口病の口腔内病変(口蓋)

手足口病の口腔内病変(口唇)

以下のような症状が出る場合もあります.

  • 手足の発疹,水疱(かゆみを伴う)

手足口病の潜伏期間は,およそ1〜3日間で,症状は1週間程度で消失します.

ただ,成人の場合,症状が普通のかぜと区別がつきにくく,熱とのどの痛みだけのこともあります.また,微熱ではなく,高熱が出る場合もあるようです.

手足口病の診断

基本的には,症状や,周りに手足口病の子供がいるかなどの状況証拠で診断を下します.成人の場合,ご本人に小さいお子さんがいなくても,職場の同僚に手足口病のお子さんがいるかなどの情報を伺ったりします.

手足口病の原因

コクサッキーウイルス16、エンテロウイルス71、コクサッキーウイルス6などのエンテロウイルス(A群エンテロウイルス)が原因となります(紛らわしいですが,コクサッキーウイルスはエンテロウイルスの一種です).これらのウイルスに一度感染すると二度と感染しないとされますが,一つのウイルスに感染しても別のウイルスに対する免疫は形成されないため,手足口病自体には複数回掛かることはあり得ます.

手足口病の感染経路と感染防止についての注意点

コクサッキーウイルス16、エンテロウイルス71、コクサッキーウイルス6は,患者さんの鼻や喉,便に存在します.患者さんは,主に小さい子どもなので,子どもが鼻や口,眼を触ってそれを机やテーブルにつけ,それを他人が触れることで感染が広がります.

もう一つの注意すべき感染経路は「おむつ」です.おむつを素手で触れ,その後の手洗いが不十分なために大人がうつってしまう場合があります.

ここで記憶するべきことがあります.

実は,上記のように症状自体は発症して1週間程度で回復します.この1週間の間がもっとも伝染力があるのですが,唾液には1〜3週間,便には2〜8週間ウイルスが含まれている場合があります.この1週間以降の時期にどの程度の伝染力があるのかは不明なので,基本的には解熱していれば学校への出席も問題ないとされますが,免疫が低下している人の場合は引き続き注意が必要です.

また,先ほど述べたように,成人は症状が乏しく,一見普通の風邪と区別がつかないことがあります.その場合でもウイルスを輩出している可能性があり,伝染性があることに留意する必要があります.

手足口病の重大な合併症

1. 無菌性髄膜炎

「髄膜炎」とは,脳や脊髄の周りにある髄液という体液にウイルスが侵入して炎症を起こしている状態です.主な症状は以下のようなものです.

  • 頭痛
  • 吐き気,嘔吐
  • 首を前に曲げると不快になる

イメージとしては,喉が痛いだけではなく,ヒドイ頭痛と吐き気もあり,相当しんどい状態になります.髄膜炎になったとしても特別な治療法が必要なわけではありませんが,全身状態がかなり悪くなるので,入院が必要な場合もあります.

2. 脳炎

髄膜炎よりも重たい病態で,脳の実質内部にも感染が及んだ状態です.意識状態が悪化したり,痙攣などを起こし場合があります.非常に稀ですが,確実に入院が必要な状態です.麻痺などの後遺症が残る場合もあります.

3. 心筋炎

こちらも稀ですが,筋肉組織にウイルスが感染し,特に心臓の筋肉に強い炎症が起こり,低血圧や致死的な不整脈を起こすかもしれない恐ろしい病態です.症状は,倦怠感や呼吸苦などで特徴的なものはありませんが,心電図や心エコーで診断がつけられます.医師の立場から言えば,疑わなければ見逃す可能性がある病態です.

手足口病の治療

特に有効な治療法はなく,普通のかぜと同じように様子を見ていれば数日〜1週間程度で治ります.その間,喉が痛くて食事が取れないこともありますので,脱水に注意してください.喉が痛いときの対応は,「のどの痛み:病院に行くべきサインとは?」のページもご参照ください.

ただ,ひどい頭痛を伴っていたり,周りから見て様子がおかしい(うわ言を言っている,尋常じゃなくつらそう,ゲーゲー吐いている)ようであれば,病院を受診することをお勧めします.

参考

アイキャッチ画像

芦屋駅前小野内科クリニック トップページへ

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. 2019年 7月 19日

関連記事一覧