神戸市にある新型コロナウイルス感染症基幹病院から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体陽性率のデータが報告されました。
外来患者(バイアスを避けるため、発熱外来と救急外来は除く)1000人の患者の抗SARS-CoV-2 IgG抗体を調べたところ、33人(3.3%; 95%信頼区間は2.3%-4.6%)で陽性でした。
これを神戸市の人口に当てはめると(性別や年齢などの比率を加味して)、約5万人が既に感染している計算になり、研究実施当時(2020年4月6日まで)の神戸市内の診断患者数69人と大きな開きがあることがわかりました。
年齢 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
症例数 | 陽性件数 | 症例数 | 陽性件数 | |
10歳未満 | 7 | 0 | 1 | 0 |
10〜19歳 | 17 | 0 | 10 | 0 |
20〜29歳 | 17 | 0 | 19 | 0 |
30〜39歳 | 41 | 1 | 49 | 2 |
40〜49歳 | 64 | 2 | 91 | 3 |
50〜59歳 | 84 | 4 | 80 | 2 |
60〜69歳 | 87 | 2 | 84 | 3 |
70〜79歳 | 85 | 6 | 81 | 3 |
80〜89歳 | 81 | 1 | 83 | 4 |
90歳以上 | 6 | 0 | 13 | 0 |
大阪市立大学から報告されたのが1%です。芦屋市は大阪と神戸に地理的に挟まれていますし、どちらの都市とも活発に往来がありますから、芦屋市内にも既に多数の感染者がいることが示唆されます。
研究の解釈として注意すべきなのは、
1つは、データを実際に集めたのは1つの病院に来院している患者さんなので、このデータを本当に神戸市全体の人口に当てはめてよいのか分からないということです。大病院に通院している方々なので、がんの治療中であったり、免疫力が低下している人も多く、新型コロナウイルスに掛かりやすい人々である可能性がありますし、逆に感染しないように注意しているので、一般人よりも感染率はむしろ低いかもわかりません。ですので、出来れば神戸市民全体からランダムに被験者を抽出して、同じような研究を行うべきかと思います。
厚生労働省が日本赤十字社に依頼して、献血された血液をつかって新型コロナウイルス抗体を調べていますが、これは、あくまで「抗体検査キットの信頼性を評価する」のが目的であるので、おそらく予定検体数は限られていると思います。地域ごとに抗体陽性は異なると考えられますので、それを考えても、人口ベースの抗体陽性率を調べるには不十分なものであろうと思います。
もう1つは、抗体キットの信頼性が国内でまだ評価されておらず、偽陽性や偽陰性がどの程度あるのかわからないため、この3.3%という数値が真の値かははっきりしないということです。この研究で使われているキットはクラボウのもので、メジャーな製品ですが、上述の通り、国内できっちり信頼性が評価されているものではありません。また、前述の大阪市立大学からの報告は別メーカーの製品を使っているので、抗体陽性率の比較も厳密行うことができません。
ただ、これまで無症候性患者が感染者全体の40-60%という数値も出ており、無症候性患者からの伝染も起こりうるという報告が出ていますので、非現実的な数値ではないと思われます。他の類似研究との数値の乖離もありませんので、概ね妥当な結果なのではないかと思われます。
既に自分たちも新型コロナウイルスに感染しており、無意識のうちに他人に移しているという感覚で行動しないといけないです。