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サプリメント摂取と心血管病(心筋梗塞,狭心症など)・がんによる死亡率の関係

サプリメント摂取は有益か?

最近疲れやすかったり,病気が見つかったことなどがきっかけで,サプリメントを飲もうと考える方は多いと思います.ただ,具体的にどのサプリを飲んだらいいのか,本当に健康のためになるのかという疑問を抱かれるかと思います.

私も,あまりこれまでサプリメントの健康への影響について勉強してことがなかったため,一つの論文を調べて見ました.National Health and Nutrition Examination Surveyという米国の調査で,内服サプリメントとその健康への影響を調べたデータが報告されていますのでご紹介します.

リコピンのサプリメントは死亡リスクとがんによる死亡リスクを引き下げた

20歳以上の成人(妊娠中・授乳中の女性は除く)を対象としたこの研究には,平均年齢46.9歳の30,899人の参加者(50.9%が女性)が含まれています.このうち51.2%が調査の30日以内にサプリを服用していました.よく飲まれていたサプリの種類は,ビタミンC,D,E,カルシウム,マグネシウム,亜鉛でした.中央値で6.3年間,参加者を追跡調査して,サプリメント服用と死亡リスクの関係を調査されました.

そのうち,リコピンの内服だけが死亡リスク(相対リスク0.82; 95%信頼区間0.68-0.98) とがんによる死亡リスク(相対リスク0.66; 95%信頼区間0.46-0.96)を引き下げていることが分かりました.相対リスクとは,この場合リコピンの服用をしていなかった人々と比べて,リコピンを服用していた人々の死亡率が何倍だったかを示しており,この場合,死亡率が18%,がんによる死亡率が34%低下していたことを示します.

その他の内服のサプリメントは,特に死亡率の引き下げには影響しませんでした.

食事からのビタミンΚとマグネシウム摂取は死亡率を引き下げた

適量のビタミンΚとマグネシウム摂取によって,死亡率が低下することが示されました.

また,ビタミンA,ビタミンΚと亜鉛を十分摂取している人は,心血管病(狭心症,心筋梗塞など)が少ないことも示されました.

過剰摂取が問題になるサプリ

1日1000mg以上のカルシウムサプリの内服は,がんによって死亡するリスクを62%高めていました.一方で,食事からのカルシウム摂取では,そのような影響はないことが分かりました.

また,ビタミンDの血中レベルが正常な人(25-ヒドロキシ V.Dが50nmol/L以上)の場合,1日10μgまたは400単位以上のビタミンDサプリで,死亡リスクとがんによる死亡リスクが上がっていることが分かりました.一方で,25-ヒドロキシ V.Dが50nmol/L未満でビタミンD欠乏の人については,ビタミンDサプリの内服による影響は特にありませんでした(死亡リスクは上がりも下がりもしなかった).

まとめ

今回の報告は,サプリメントと死亡リスクについての評価であって,その他血圧やコレステロール値など,他の要素(例えば骨粗鬆症の骨折予防とか,血圧,コレステロールなど)に対する影響は調べていません.

ただ,サプリメントの過剰摂取が逆に死亡リスクを高める危険性が示されていますので,今回の報告で問題があると指摘されているサプリメントを使う際は十分に注意が必要と思われます(例えば,ビタミンDを使う前に,25-ヒドロキシビタミンDの値を調べるなど).一方,抗酸化物質が抗がん剤との相互作用を起こす可能性も指摘されており,がん治療を受けられている患者さんは,サプリ使用前に主治医と相談することをお勧めします.

参考文献

 

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